・その日…旅の始まり

・始まりはいつもハゲ
・空へ・・・
・キンポ空港…
・ヒースロー空港…
・霧の都ロンドン
・パンクパンクパンク
・***
 
 
 

その日・・・旅の始まりはモーニングコントから
no.001-1

つらく悲しい変物語・・・

 1998年4月15日午前4時、岩井家では家族みんなが落ち着かず、こんな明け方前の時間だというのに、父も母も、狭い家の中をウロウロしてた。
父は、今までまるっきり気にもしなかったような花瓶を朝4時だというのに磨いてる。
母は、同じく朝の4時だというのに、スカートを何着もだして、それらを着ては脱いでを繰り返している。
おばあちゃんは、ドラマなどでありがちな仏壇の前でお経を唱えてるというベタネタを真面 目にやっている。

 こんな言い方をすれば、実際の戦争を経験した人には大変失礼なのだが、戦争に出陣する子を送り出す家庭に似た情景のような気がした。やはりそれは僕自身が、これから出発する先の見えない旅に対して、相当な不安を抱いていたせいなのだろうか。それとも、海外などには、まるっきり縁のない岩井家の人たちならではの、それぞれが勝手にどんどん膨らませた想像によるものだろうか。 とかく異常な朝だった。というより岩井家全体をセットにした岩井家全員参加のコントである。 だけど家族の愛は、多少おかしなカタチではあったが僕にしっかり届いていた。


モーニングコントのオチ
no.001-2
 ・・・京都駅まで、父に車で送ってもらう。 当然、朝の4時からスカートを何枚も試着していた母は、マスカラもばっちりきめた厚化粧でその車に同乗していた。でもなぜピンクの口紅なんだろう?
・・・朝5時半、京都駅に到着。 両親の見送りはあったが、誰一人、友人の見送りがないまま旅立って行くのかと少し切ない気分でホームに向かう。 すると、大学時代の友人(友人というより先輩)二人が早朝にもかかわらず京都駅に駆けつけてくれていた。 僕は感動した。 感動のあまり、その涙のお別 れの後、僕は間違って違う電車に乗り込んでしまうのである。

 「さあ、これからいよいよ出発だ」っていう時に、最初の移動で、しかも日本で、しかもしかも生まれ育った地元京都でつまずいた。飛行機に乗る前に・・・。 僕が間違って乗った電車は、そんな間抜けな僕のことを気にするわけもなく、正しく動きだした。

 「行って来ます!」 格好つけて、気合いの入った最後の言葉を友人に言ったのは良いものの、僕はどこへ行くつもりなのか? 見送りに来てた友人も呆然と間違った電車に乗った僕を苦笑いで見送るしかなかった。 大きい荷物を背負いこれから旅立って行こうと威勢のいい姿格好だけはしてるものの、こいつは果 たして関西空港にすら辿り着けるのだろうか? 乗り間違った電車に気づいた時はさすがにかなり焦ったが、次の停車駅で正しい電車に乗り換えてからは、少し落ち着き、車窓から見える何でもないような風景を目にしながら物思いに慕った。 見慣れてはいるものの、これが日本の風景なんだと…。この時は、これから始まる旅への希望というよりか、今日去る日本の事、僕の友人や家族との別 れの事をずっと寂しく考えていた。

始まりはいつもハゲ・・・
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こんにちは『ちんねん』です…

 ・・・その3週間前、僕は、大学の卒業式を前に頭を剃って、丸坊主にした。 理由はあった。 通常4年制の大学は、その名の通 り4年で卒業するものだが、僕は卒業式に自分が主役で参加するまで5年かかった。しかも、僕の通 っていた大学は普通なら2月半ばには卒業が決定しているのだが、僕は5年目にしても3月中旬まで卒業の判定が下されなかった。そんな最後までいろいろとあった大学生活にきれいさっぱりお別 れの意味を込めて坊主にした。 いや、でも坊主にした一番の理由は目立ちたかったというものだった。

 無性に目立ちたかったのだ。 普段から目立ちたがりやではあったが、いつ帰るかわからない旅の前に、『岩井慎悟』の存在感を友人達にアピールしたかったのかもしれない。 しかし、坊主頭に袴姿で出席した卒業式では、『岩井慎悟』をアピールするどころか、どこかの寺の子坊主が学内に紛れ込んだようになってしまい、あげくには、友人から『ちんねん』と新しいあだ名まで付けられる始末だった。 他にも坊主にする理由はあった。 まず、旅先で大変便利ではないかということ。 散髪もしばらくしなくても大丈夫だし、頭を洗うのもかなり手軽!なにより髪を気にしなくていいじゃないか。そんな理由が主だった。


だから始まりはいつもハゲ・・・
no.002-2

びびってる?

 ・・・それから数日後。
出発する日が近づくとともに、わずか数ミリだが、坊主頭に芽が出始めた。 普段、髪の長い時には日々の髪の成長なんて認識できるはずもなく、気にとめることすらないのだが、坊主頭っていうのは日々のその成長というものは成長日記をつけたくなるぐらいである。 でも、僕の頭に芽が出始めて1週間ぐらいして、異変に気づく。

 ちょうど頭のてっぺんより、やや右斜め前方あたりに、500円玉 ぐらいの大きさで芽の出てこないゾーンがあるのに気づいた。 これは、いわゆる円形脱毛症!俗に言う「10円ハゲ」!! その時、「10円玉よりデカイので500円ハゲとでも呼ぼうか?」そんな冗談を言う余裕すらなく、よっぽど旅立つことに不安と孤独感を感じてる自分自身を知らされ、その自分の精神的弱さにさらに不安にさせられた。 でも、それよりも実はハゲ体質だった自分を知ったことが一番ショックだった。


空へ・・・
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 ・・・時はまた関空に向かう電車の中に戻る ・・・
関西空港へ向かう電車の中で僕は、その500円ハゲを撫でながら、京都から大阪へ変わっていく車窓の景色によって、徐々に、これから遠くへ旅立つんだということを自覚していった。

 関西国際空港到着。 レンゾ・ピアノという建築家が設計した立派な空港である。 僕は、この世に生を受けて23年、ただ一度もジェット機に乗ったことがない。 ジェット機どころか新幹線すら乗ったことがない。あえて言うなら、学生時代、一番仲の良かった友人と九州へバイクでツーリングに行ったとき、唯一セスナに乗ったぐらいである。 移動手段で、時速200kmを越えるような乗り物に僕は乗ったことがないのである。 ましてや、海を越え、国境を越えるなんてことは…。 おばあちゃんが朝の4時から仏壇の前でお経を唱えるのも理解できるような気がする。 この大きな空港の中に実際に自分の身を置き、僕は、また心拍数が上がり、激しい緊張に襲われた。 しかし、いよいよ日本を出るという思いよりも、全てが初めての経験で、出航手続きの仕方すらわかってなかったので、どこへいけばいいのか、何をすればいいのか、そんなことでいっぱいいっぱいで、大きいバックパックを背負ったまま『地球の歩き方』を見ながら、キョロキョロウロウロ空港内を歩き回っていた。


そして空へ・・・
no.003-2

『・・・』

 ・・・この時の気持ちはすごく新鮮だった。 そして、なにかしら懐かしくも感じた。 初めてする事や慣れない事というのは、どんなことでもドキドキするものである。 その時の感覚というのは、もちろん楽しみな感情もあると思うが、楽しさのドキドキよりも不安から生まれるドキドキと言うかとまどいのような感情の方が大きいように思う。 普段、何気に過ごしている生活の中では、慣れ親しんだ環境にどっぷりつかり、こういうドキドキする気持ちは味わいにくくなってきているように思う。

 そんな不安やとまどいからくるドキドキした感覚を、出発前の関空から僕はめちゃめちゃ感じてた。 この時、既に僕の旅は始まっていたのである。 何度も海外へ行ってる人にしてみれば、「たかだか空港での手続き」と感じるかもしれないが、僕にとっては初めての経験であり、今まで自分の知らなかった事を誰に教わることなく生の現場で自分自身で経験する『はじめてのおつかい』のようなものだったのだ。 そんな緊張の中、なんとか飛行機に乗り込み自分の座席に座るところまで事を終えた僕は、ようやくホッと一息ついた感じだった。 そして、一息つき余裕ができたと同時に、まだ見ぬ 世界への期待と希望といったワクワクした気持ちをようやく抱き始めた。


キンポ空港…そこはすで海外
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 ここでひとつ説明を。
格安航空券を購入し、完全に自由旅行のスタンスで海外旅行などをする時に、金額やルートまたは機内食や機内サービスといった好みや目的などで航空会社を選びます。
僕のこの旅の時は、まったくの初めてだったので、ただ単に雑誌「AB-ROAD」でその時一番安かったチケットを購入。それがたまたま大韓航空だった。

…ということで、目的地ロンドンの前にキンポ空港(ソウル)でトランスファー。
しつこいようですが、僕はこの旅がまったくの初めて。飛行機の乗り換えも初めて。キンポ空港に到着した瞬間また強烈な不安に襲われた。
乗客はそれぞれ皆飛行機をおりていく。
この中には、僕と同じようにロンドン行きの飛行機に乗る人もいるのだが、他の都市に行く人もいれば、ここソウルを目的とした人もいる。
安易に誰かに着いていけない…。
ヤバイ!
挙動不審さ度80%ぐらいの格好で僕は廻りをまたキョロキョロしていた。
きっとあの時の顔は、かなり悲壮感漂いつつも間抜けな顔だっただろう…
このまま挙動不審な行動をしていても仕方ないと思い勇気をだして、目があった男性に声をかけてみることにした。
「すいません。ロンドン行きはどっちでしょうか?」

キンポ空港…そこはたしかに海外
no.004-2
 すると、日本人だと疑いもしなかったその男性は韓国の方だった…。
ヤバイ!ヤバイぞ!!
僕の心拍数はさらにUP!
挙動不審さ度も98%までにUP!
さらに激しく廻りをキョロキョロをサッカーの司令塔以上に繰り返す僕に、小太りのおばちゃんが大阪弁で声をかけてきた。
「おにいちゃん、ロンドン行き?あっちやで!!そんでな、飛行機でうちの隣に座ってたお姉ちゃんもロンドン行くって言ってたで。そのお姉ちゃん海外初めてで不安がってたからお兄ちゃん、一緒に行ってあげ!うちはロサンゼルスやから…。あれ?あの子どこ行ったかな?お兄ちゃんと同じぐらいの歳の子やし、よろしく頼むで。」
「はい。どうも。」
おばちゃんは、それだけ言って去っていった。
(ラッキー!!助かった。)
その女の子も初めて?そんなこと関係無く僕は一人じゃなくなるってことにかなりの安心感を抱いた。
いやいや二十歳を過ぎた男が情けない話だが、どんなことでも一人より二人です。初めてのことならなおさらです。まったく…。

キンポ空港…そこはまぎれもなく海外
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 僕はすぐに、おばちゃんに教えてもらったロンドン行きの飛行機の待合室に行き、そのおばちゃんが言ってた女の子を探した。
しかし、一人でいる日本字らしき女の子っていなかった。
一人で不安がってる女の子ということで、「小柄でおとなしそうなかわいい女の子」と僕は勝手に想像を膨らましていたので、僕のイメージに該当する女の子がその場にいなかっただけなのかもしれない。
いや、でも、ここはまだソウル。関空から同じ飛行機にのってこのキンポ空港に到着し、この後も同じルートでロンドンへ行く日本人ももっといるはず…。それが、「小柄でおとなしそうなかわいい女の子」どころか、日本人らしき人すらいないじゃないか!
 大韓航空の特徴は北回りのルートなので欧州に同日着。そしてトランスファーの時間もわずか1時間ぐらいです。
そうこうしてる間に搭乗時間になり、飛行機に乗りこむことになってしまった。
僕は飛行機に乗りこんだ後も、キョロキョロし「小柄でおとなしそうなかわいい女の子」を探し続けた。

no.005-1

関係ないが、僕も昔はキムタクに憧れた?

 …


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